2015年6月6日土曜日

民事系第1問


第1 設問1 (以下民法は法名略)

1小問(1)

(1)    Aとしては、AB間の平成23年4月1日の材木①の売買契約において所有権留保特約が結ばれ、所有権(206条)の移転時は代金完済時とされたところ、いまだ支払いがないため材木①の所有権はいまだAにあると主張しうる。

この点、所有権留保という形式をあえてとる当事者の合理的意思を尊重して、所有権は移転しないと解すべきであるから、Bはいまだ所有権を取得せず、転得者Cも所有権を取得しえないから、Aの主張は認められる。

(2)    これに対しCとしては、即時取得の抗弁(192条)を主張しうる。

アCは「取引行為によって」「動産の占有を始め」ている。

イ占有の態様は「平穏」「公然」であり、Bが所有権を有しないことに関して「善意」であった。

ウもっともCはBと長く取引関係に立つものであり、AB間の売買では所有権留保特約がなされること、Bが代金完済前の転売によってAとトラブルを生じていたことを認識していたのであるから、AおよびBに対し代金完済の有無に関して確認すべき調査確認義務があったといえる。それにもかかわらず漫然と上記義務を怠り、Bの材木①の所有権を信じたのであるから「過失」が認められる。

エしたがってCの主張は認められない。

2 小問(2)

(1)    Aとしては加工に伴う償金請求(248条)として不当利得(703条)に基づく材木②の価格分の返還請求をなし得る

アDは材木②を利用して乙建物のリフォーム工事をCに行わせているが、これにより乙建物の価値が上昇したので「利益」がある。

イ一方、Aは材木②の返還請求が加工によって社会通念上履行不能となっている。Cに即時取得は成立せず、「過失」が認められるから、帰責性があり、Cに対する損害賠償債務(415条)に転化しているが、損害賠償債務は本来の返還債務そのものではなく、また、Cの無資力の危険を伴うため「損失」が認められる。

ウ上記「損失」と「利益」には社会通念上の因果関係が認められる。

エでは「法律上の原因」がないといえるか。

ⅰ当事者間の公平という不当利得制度の趣旨から、「法律上の原因」とは当事者間において財産的価値の移動を正当化するに足る実質的・相対的な理由のあることをいう。

ⅱ本件についてみるに、確かにDはCに対してリフォーム代金を支払っており、これによって上記「利益」を得ているのである。しかし、Aとの関係においては対価関係なしに「利益」を受けたものと評価でき、財産的価値の移動を正当化するに足る実質的相対的な理由がない。

ⅲしたがって「法律上の原因」はない。

よって上記主張は認められる。

(2)    これに対しDとしては権利濫用の抗弁(13項)が考えられる。

ア不当利得返還請求が権利濫用といえるためには、請求権を行使することが著しく正義に反するものであることを要する。

イ本件では、Aは材木商であり、Bと長年にわたって取引関係にあった。Bは前回も代金完済前の転売を行っておりトラブルになっていたのであるが、それにもかかわらずBに対し材木②を売り、利益を上げようとしていたのであるから、完済前の転売のリスクはAも覚悟していたものと考えるべきである。それにもかかわらず、かかるリスクが現実化した本件において、まったく事情を知らずリフォーム工事をうけたに過ぎないDに対し請求権を行使するのは、かかるリスクを消費者に転嫁するものであり、法相責任の法理に照らせば著しく正義に反すると評価できる。

ウしたがって権利濫用の抗弁は認められる。

2 設問2

1 小問(1)

(1)             Gとしては、Fが甲土地の所有権移転登記を平成24117日に備えたこと、丸太③に明認方法がなさていないこと、を主張すべきである。

(2)             なぜならば、丸太③は対抗要件を備えない限り土地に付合し、土地所有者の所有となるが、Eは明認方法を先立って備えていない。177条の「第三者」は当事者およびその包括小計人以外のもので登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有するものであるところ、GはFG間の寄託契約(657条)に基づいて丸太③を保管するものである。そして丸太③の所有権が仮にEにあり引き渡し請求に応じざるを得ないとしても、寄託物返還債務の履行不能につきGに帰責性はなく、債務不履行責任を問われることもなれれば、危険負担の適用で5341項により反対給付たる保管料の支払いをもけることができるから、所有権の帰属につき利害を有しないから「第三者」にあたらない。そのため対抗要件の抗弁を主張できず、所有権喪失の抗弁として、Fが先に対抗要件を備えたことをも主張する必要がある。

2 小問(2)

(1)             Gとしては丸太④の保管料を被保全債権とする留置権(2951項)に基づき返還を拒絶することが考えられる。

(2)             保管料債権が「その物に関して生じた債権」に当たるか。

アこの点、目的物の返還拒絶を通じて間接的に履行を強制するという留置権の趣旨から、「その物に関して」といえるためには、債権発生時において債務者と目的物の所有者が同一であることを要すると解す

イ本件についてみるに、丸太④は同年17日までに明認方法が施されており、Fの同年117日の甲土地所有権移転登記に先立つから、Fに所有権を対抗できる結果、丸太④をGに預けた同年22日以降Fが所有者となったことはなく、債務者と所有者は同一でない。

ウしたがって「その物に関して生じた債権」といえない。

(3)             よってGの反論は認められない。

3 設問3

1小問(1)

(1)    LとしてはCに対し714条に基づいて損害賠償請求をすることが考えられる。Hは未成年でありCはHの親権者であるからその監護義務者(820条)である。しかし、Hは15歳であって、何度も悪質ないたずらをして注意されるなど、事理弁識能力があるものと考えられるから、責任無能力者ではなく、同条に基づく請求は認められない。

(2)    次に709条に基づいて損害賠償請求をすることが考えられる。709条と714条の関係であるが、714条は監督義務者に特別の責任を認めたものであり、709条による不法行為の成立を否定するものではないから、監督義務者の故意過失と損害のあいだに相当因果関係が認められる限り、709条による責任を認める。本件ではCはHと同居しており、Hは度々悪質ないたずらをしていたのであるから、CとしてはHが他人に危害を加える恐れを相当程度の蓋然性をもって予見できたといえ、一般的な注意にとどめずHの行動を監視するなどといったより積極的な加害防止策をとるべきであった。それにもかかわらず、何らこうした措置を講じないでいたことについて「過失」が認められる。Hが角材を道路において自転車を転倒させることも社会通念上相当といえ、因果関係も認められる。したがって上記請求は認められる。

2 小問(2)

CとしてはLが携帯をいじっていたことや前照灯が故障していたことという「過失」が損害の発生に寄与したのであるから過失相殺(722条)を主張しうる。Lの過失は被害者Kの過失そのものではないが、損害の公平な分担という不法行為の趣旨から、被害者と身分上生活上一体の関係にあるLの上記過失を被害者側の過失として過失相殺において斟酌すべきである。

したがってCの主張は認められる。 以上

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